No Diary

【ドラマ】岸辺露伴は動かない

解説

『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する漫画家・岸辺露伴が主人公のスピンオフ作品を高橋一生主演で実写ドラマ化。2020年の年末に3夜連続放送。

感想リスト

20201228
第1話 富豪村
20201229
第2話 くしゃがら
20201230
第3話 D.N.A

20201228 Mon

第1話 富豪村

  • まさかの『岸辺露伴は動かない』実写ドラマ化。でも放送前から「もしかしたらイケるんじゃあないか?」というムードが漂っていたので(露伴邸のビジュアル、コスプレ的にならないギリギリラインの衣装デザイン、年末特番かつ3夜連続という特別枠、あえての小説版からのエピソード選択、安心と信頼の小林靖子氏脚本、予告番組のナレーションが櫻井孝宏氏という「分かってる」感、等々)ちょっと楽しみにしていたらなんと第1話の放送直後からSNSでかなりの高評価(※わたしはチャンネル権がないのでリアルタイム試聴は不可能であった)(この感想を書いているのは年明けです)。これは見ないわけにはいかぬと年始のドサクサでチャンネル権をもぎとって視聴してみたら、実写化云々以前に普通にドラマとしてよく出来ていた。ちゃんと『ドラマ化』していた。「無難」だとか「大人の都合」だとかそんなチャチな言葉が思い浮かんでしまうこともなく最後まで見てしまった。つまり面白かった。完全に一話完結であったものをドラマで構成を変更したのは放送前から分かっていたので途中からはむしろ改変部分が楽しみになるくらいだった。というわけで以下は各話感想です。
  • 第1話『富豪村』。なんつーか高橋一生氏すごいな、顔面が似てないのにちゃんと露伴してるわ。『孤独のグルメ』の松重氏ゴローちゃんくらい露伴ちゃんしてるわ(※かなりの褒め言葉)。ポージングから表情作りからマジで『演技』で露伴を表現してるって感じでグッときたぜ。準備体操もやってつかみはOK。飯豊まりえ氏が演じる泉京香も絶妙なキャラクター表現で笑った(衣装もいい)。本にされたときにファッション誌みたいになるやつ、これ登場人物ごとに決めるの楽しかっただろうな…。泥棒が目の前にいるのに自分の漫画を途中で読まなくなった理由のほうが気になる露伴、追加シーンだが解釈一致すぎる。ピンクダークの少年が第8部まで続いていたとは(単行本のロゴが『岸辺露伴は~』コミックスのと似てる!)。原作では「グロ注意ッ」だった罪もない小鳥がマナー違反で死ぬ描写はグロさゆえアウトだったのだろうが、泉京香の母と彼氏が犠牲になる(なってない)のをオリジナル追加キャラである『太郎ちゃん』こと中村倫也氏と犬に変更したのはなんの違和感もなく、なおかつ『ジョジョ』に出てくる動物はひどい目に遭う法則をも盛り込んでおり構成力が高い(ひどい)。一究役の柴崎楓雅氏、重要な役だったが只者ではない(眉毛もない)怪しげな雰囲気が出てていたし、ガキを負かして会心の笑みを浮かべる高橋露伴ちゃんの追加シーン演技があまりにも解釈一致。露伴が再試み(さいトライ)(←放送時の字幕も原作再現だと話題になっていた)のせいで利き腕が動かせなくなるのも「漫画を描くことが何より優先」な露伴のキャラクターを原作未読視聴者に説明しつつ緊迫感も上乗せする良い改変だった。畳の縁を踏むか踏まないか程度の些細なことが生死に影響を与える奇妙さ、あまりにも荒木作品らしすぎて好き。マナー違反をその場で指摘するほうがマナー違反理論。謎の新マナーを常識かのようにお出ししてくるマナー講師が近年ネットで叩かれがちだからか視聴者のウケも良かったようだ(一究はマナー講師ではない)(とにかく反論シーンの露伴の大人気なさっぷりが最高)。つまり改変がことごとく自然で違和感がなく、作品の理解度が高い人が制作に関わるとこれだけ満足感が高い実写化になるのね…。ヘブンズドアーのヴィジョンはないけどそのぶん顔がペリペリ剥がれる描写の不気味さが引き立ったように思います(そもそも原作第四部の時点でヴィジョンが出ないこともあるし)(視聴者の感想で「視聴者はスタンド使いではないからスタンドが見えない」という解釈があって笑った)。櫻井孝宏氏が毎回さりげない役で喋るファンサービス。岸辺露伴の漫画は収監中に読んでも面白い。次回予告がいきなりホラー。

20201229 Tue

第2話 くしゃがら

  • 第2話『くしゃがら』。このエピソードだけ北國ばらっど氏による小説が原作。実は未読だったが何年も前のウルトラジャンプに短編集の小冊子が付録で付いてきたのを思い出し放送前に引っ張り出してきて慌てて読んだ(※2018年に単行本化されています)。なるほどこりゃ怖い。
  • 今回は舞台版『死刑執行中脱獄進行中』主演の森山未來氏が漫画家・志士十五役で登場。小説ゆえ映像設定がない人物だったわけだが外見以上に森山氏の演技が役のイメージに合致しすぎていて完全に脳内の「志士十五」像を上回っていった。この「もっとクセを出して走れ」(byジャイロ・ツェペリ)的なスタイル、嫌いじゃないわ。カフェでのべらべら長話のスムーズさも凄いが十五が路上に倒れ込む芝居がガチすぎる(まさに怪演)。明らかに変人だが仕事には真摯だし、困った奴ではあるが根っこからのイヤな奴じゃあないというある意味露伴と同類の男だが、愛嬌とチンピラみを併せ持つおもしろ兄ちゃんなキャラが精神汚染後にあれだけ豹変するのがコワイ(まさに怪演)。禁止用語リストが全面モザイクは流石に笑う(Blu-ray版が出てたとしてもたぶん取れない)。『ジョジョ』で禁止用語といえばド低脳→クサレ脳ミソ事件。超棒読みで怖がってみせるシーンはSBRの「かなり大爆笑!」のオマージュよね。リアリティを重視する作家としての精神性は認めてるのに露伴とは性格や態度が致命的に合わない志士十五、まさに岸辺露伴のためにデザインされたキャラ造形すぎる(興味深い話題に露伴が食いつこうとしたところで十五が食い気味に次の話題に移行しちゃうシーンの解像度が完璧)。厄介な相手でも知り合いを簡単には見捨てられない露伴の人間性がイイのだ。おごられるのがイヤで十五が置いていったカネを泉京香に押し付けたり、しばらくなにも食べていないのを心配はするがピザを自分で直接注文してやらないのも解釈一致(制作側が『露伴らしさ』を研究し尽くしている!)。泉京香がくしゃがらに興味を持たないから無事というのも『納得』しかない(本来このエピソードに登場しない人物なのに「ドラマの泉京香ならこうするだろう」という説得力がある)。ネタ帳のような十五の本。ヘブンズドアーを侵食するような謎の真っ黒な怪異。ここだけは原作でのヘブンズドアーのチート能力っぷりを知らないとなぜここまで露伴がビビってるのか少しだけ分かりにくいかも。正気に戻っても相変わらず例え話が下手な十五。「新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝」のほうが比喩としては分かりやすいな(そういえば今年は元旦用のパンツを買い忘れました)。下手したらスタンド使いより催眠術師のほうが貴重なんじゃあないか、杜王町では。最後の注意書き、原作でもオチとしてこの仕掛けはあるが『NHKからの注意文』という体裁にしたことでホラー倍増。ところでNHKってビチグソ野郎発言はOKなんですね。

20201230 Wed

第3話 D.N.A

  • 第3話『D.N.A』。改変要素が多そうなのは分かりきっていたので逆に一番内容が気になる話だったが良い最終回だった。これがラストエピソードに決まったのは、おそらく『岸辺露伴は動かない』の中でも数少ない後味のいい結末だからであろう(なにしろ荒木先生がめずらしくハッピーエンドにしたよ」とコメントするレベル)。ちょうどジョジョ第四部の映画が公開の時期に別冊マーガレット(!?)に掲載された作品で、比較的ロマンチック(?)な展開だったのも選ばれた理由ではなかろうか。逆に言えばもしドラマの第二弾とかがあったとしても(もしそれまでに原作の新作が出なければ)そのときはコワイ&不気味な話ばっかりになる可能性が非常に高い。『密漁海岸』は良い結末だけど映像的難易度以前にプロット時点でテレビではコンプラ的にアウトだろうし…いや見たいかどうかって聞かれればそりゃ見たいが…。
  • で本編ですが、原作で『尾花沢』(※名前の元ネタはM県のとなりの山形県の地名)のポジションだった男性が太郎ちゃんこと『平井太郎』に存在ごとチェンジ、娘の真央ちゃんが真依(演・瀧内公美)の亡き夫の忘れ形見(元は精子バンクからの精子提供で授かった子)という設定になり身体的特徴はオッドアイのみに変更(巣ごもりする性格も追加設定。透明化するのはそのまま)。そして何より太郎が元夫と同じ癖を持つ理由が臓器提供によるものという説明が追加。ここまで色々変更したにもかかわらず(※細かい変更・追加はもっとありますよ)物語の根幹を崩すことなくハッピーエンドに収めたのは素晴らしい。元々は岸辺露伴が最初と最後にしか登場しない正真正銘の『動かない』エピソードだったのがうまいこと露伴参加型のシナリオになっていた。ヘブンズドアーが人を完全な本にしてしまう描写、ひょっとしたら昨今の情勢で撮影やCG制作の時間的都合を考えての苦肉の策みたいな理由もあったのかもしれないが(少なくともヘブンズドアの能力発動シーンは制作に半年かかったらしい)、片平母娘と太郎ちゃんが飛び出す絵本になるアイデアは穏やかな公園の背景もあって奇妙な美しさがあり、まさに実写ならではと言うべき表現で思わず脳内で拍手してしまった。真央ちゃんは幼児だからまだ字のある本ではないというディテールもいい(写真家である平井の本は写真集のようだったが「死」の真っ黒なページの後は記憶喪失=穴だらけの紙になったり)(泉京香の本がペラめのファッション誌化したのは当然笑った)(でも最後は太郎ちゃんの幸せを願って笑顔で身を引くことができる素敵な人なんですよ彼女は)。露伴先生は鍛えてるから山の中を長距離歩いても平気だし十五につかみかかられても反撃できるし足だって(ふんわり彼氏より)速いのだ(ついでに『ザ・ラン』も多少意識してるか・も)。血の因縁や継承は『ジョジョ』本編でも重要なテーマのひとつであるがドラマでは遺伝や臓器提供といった要素でそれっぽさを加えてきた感もありますね。チンチロリンの件を根に持っている(たぶん今も真実を見抜けていないっぽいのが笑う)小ネタもそうだが全体的にファンサービスが凄いよ。過剰にジョジョらしさを持ち出してくるんじゃあなく(なにしろ「スタンド」の名前すら出てこないんですよ)ここは『ジョジョ』と地続きの世界だ」という前提で制作していたらこうなったのだろうと『心』で理解できた。第1話のだが断るも有名な決め台詞だからとりあえず追加しましたーってノリじゃあなく、しっかり「自分で強いと思ってるやつに「NO」と断ってやる」シチュエーションで使ってたしな。作品の理解度が高い人が制作に関わるとこれだけ満足感が高い実写化になるのね…(二度目)。というわけで満足した。週刊少年ジャンプじゃあなく「週刊少年ジャンボ」(と、集英社じゃなく集明社)になってたのだけはちょいと残念だったが、よく考えたらNHKだからか!?(※商品名とかが出せない縛り)(『香水』のドルガバは紅白でもOKだったのにッ)