Loop Hero

Loop Hero

EpicGamesの無料配布でもらっていたのを積んでいたが2024年2月に人様の配信を見てやりたくなりクリアまでプレイしました。ジャンルはよく分からないがカードゲーム風のローグライク系。日本語版あり。

(2024年9月1日:公開/2024年9月2日:ネタバレ追記)


※ここから下はネタバレあり


ループってそっちかよ

ゲームのオープニングでいきなり世界が終わる。あらゆるものが暗闇の中に消えていき、ほんのちょっとの地面だけ残った感じ。あとは虚無。主人公は戦士風の若者だが出自も名前も謎。よくわからないが、一部だけ残った世界と残った人々でなんかをどうにかしようという雰囲気で始まる。

初めは本当に何もない(たき火以外は)

本作は上画像の「建設」モードと、ゲームのメインである戦闘などを行う「アドベンチャー」モードの2画面を行ったり来たりしながら進行する。アドベンチャーモードで物資を集め、建設モードで拠点を充実させていくと主人公が強化される。例えば『薬草売りの家』を建てると冒険中に回復ポーションが使えるようになる、といった具合。また、建てた施設は更に物資を投入して効果を強化したりも出来る。

どれから建てるか悩むやつ(この状況では悩む余地は無いが)

『Loop Hero』の真髄であるアドベンチャーモードを開始すると、たき火を起点としてひと繋がりの道が生成される。そして主人公はこの道の上を自動でグルグル回り始める。そう、これが本作のループだ。「えっ、そっち?!」と思いました。ゲーム内容をよく知らなかったので。

ループ(loop):1 輪。輪形のもの。3 繰り返すこと。反復。 (デジタル大辞泉より引用)

この道も最初はたき火以外なにも無いが、下に並んでいるタイル(カード)を選んで森や山、村などを配置していくことでリソース(建設用の物資)が手に入る場所が出来たり、敵が湧き出る場所が出来たりしていく。『森』のタイルは上を歩くと木材のリソースが手に入るが、定期的に敵が出てくる上に隣のタイルに侵略しに行ってしまうなど、大抵はタイルごとに複数の影響がある。隣に特定のタイルを並べることで種類が変わるタイルがあったり。

タイルは種類ごとに配置できる場所が決まっている。具体的には「道の上」「道の隣」「それ以外」など。『宝物庫』は隣接するタイルない場所にしか置けないなど特殊条件もある。

例えば上の画面で道の内側に置いた『牧草地』は隣に牧草地以外のタイルがあると『花の牧草地』になり効果がアップする(朝にHPが2回復→3回復)。だからこんな狭いところに並べないほうがいいんです。プレイ初期のスクリーンショットなので何も分かってない配置である。

少し分かってきたので牧草地に花が咲いた頃

これらのタイルは建設モードで新しい施設を建てるなどすると使える種類が増えていき、アドベンチャーモード開始前に好きなタイルを選んでから出撃することが出来る。カードゲームで言うところのデッキを組む的なことである(実際「デッキビルドメニュー」という名前の画面で行う)。画面下のタイルは敵のドロップなどで随時追加されていくが、所持上限を超えたものは手札から消えてしまうので全然使いたくないタイルはあらかじめオフにしておくのも大事である。

ゲームが進行するとレベルアップ時にトレイトというスキル的なものが使えるようになるが、これは最初に持っているものは固定で、タイルのようにオンオフは出来ない。ゲームの進行によって追加されたトレイトだけは切り替え可能。

カードゲームっぽい説明文

敵が出てくるタイルは厄介だが、敵を倒さないと手に入らない種類のリソースも多く、また時間が過ぎるごとに敵もどんどんレベルアップしていくので計画的に配置していく必要がある。プレイヤーの強化が間に合わないと死。ちなみに戦闘は完全オートです。ポーションも勝手に使ってくれるのでプレイヤーは何もしなくて大丈夫。逆に言うとどんなにピンチになってもプレイヤーは手出し不可能なので事前の準備が重要です。

HPがゼロになるか、自主的に撤退するとアドベンチャーモード終了となります(右下あたりの走ってる絵のボタンで撤退)。撤退は戦闘中以外はいつでも可能だが、主人公が『たき火』タイルの上にいる時以外の撤退は大量のリソースを失うことになる(戦闘の敗北による撤退では更に減少)。進退の見極めは慎重に。

なお画面の右上は装備欄で、右中段が所持装備アイテム一覧。装備は敵のドロップや宝箱からランダムで手に入るのでその都度取り替えながら戦う。装備の取り換えだけは戦闘中にも可能。 装備できないスロットがあるのは別のクラス用です。そう、初期職とは別のクラス(職業)もあるんです。

ループしているのは道だけでなく昼夜のループもある。左上の緑のゲージがいっぱいになると1日が終了して新しい日が始まる。これは前述の「定期的に敵が出てくる」のフラグにもなっており、例えば2日に1回敵が湧いてくるタイルとか、朝イチ限定で戦闘中に強力な一撃が出るトレイトとかがあったりする。更に時間ゲージの下のゲージには特別な意味があり、これが右まで達すると……

といった感じでゲームをやっていきます。なおアドベンチャーモードの道はプレイごとにランダムな形で再生成されます。つまりその都度やりなおし。ローグライク的なやつです。それもまたループだ。

ループをかちぬくぞ!

アドベンチャーモードが終わったらまた建設モードに戻ってくる。どうやら野営地を出て、虚無の暗闇に入って戻って来られるのは主人公だけであるらしい。それ以外の物や人は誰も見ていないと知らない間に消えてしまうが、主人公が持ち帰った石や木材といったリソースだけは何故か消失しない。世界の再建は主人公がいないと不可能なのだ。責任重大だ。

建設モードで新しい施設を建てると生き残った人々との会話シーンも発生する。料理人、鍛冶屋、学者など、絶妙に濃い目のキャラクターが主人公を出迎えてくれる。本作は公式に日本語化されているが、セリフのテキストが翻訳調なのも逆にいい味を出している。なんでだろう、キャラクターの顔グラが洋風だからかな。洋風の顔グラって何?

特定の層に絶大な人気が出そうな気配を醸し出している墓守

施設はそれ自体が効果を発揮するものもあれば、下画像のように新しいメニュー機能を追加する施設もある。ここで各スロットにアイテムをセットしておくとアドベンチャーモードのプレイ中に様々な効果が得られる。例えば『たき火』タイル通過時の回復量がアップするとか、ポーションの最大所持数が増えるとか。
実はプレイ途中までこれが出来る施設を建て忘れていたので実質縛りプレイになりかけた。便利なので縛りプレイでもない限りは積極的に使おう。

他には図鑑的な要素が解禁される施設とか、リソースを生産してくれる施設などがあったりします。ただし建設できる施設の種類は解禁される順番がスキルツリー的に決まっているのでどこにどうリソースを使うかが悩みどころ。

他の施設を建てると使えるスロットが増えるよ

ざっくりとだが大体のシステム説明は以上。主人公の移動も戦闘もオートで一見すると放置ゲーのようでもあるが実際は意外とやることが多く常に手と目を動かす必要があるゲームです。

そして本作はなんといっても試行錯誤が非常に大事なゲームで、常に同じプレイスタイルでいると次の施設を建てるのに必要なリソースが永遠に集まらないといった事態になったりもするので一部は攻略を見ながらプレイすることになった。一度に4匹以上の敵と戦わないと出てこないリソースとか知らんよそんなの…。一応「これをやると勝ちやすい」みたいな戦法もあるにはあるがノーヒントでプレイするとクリアまではそれなりに時間がかかるかも。数十時間は余裕で遊べるでしょう。

あなたもループヒーローになれる

ここからは感想。ゲーム自体は簡単操作で結構やりがいがあって楽しかったが特に気に入ったのは主人公のキャラクターです。本作は主人公が喋るタイプのゲームだが、何かあるごとに「感想」を言ってくれるのがなんか気に入った。ものの見方がシニカルというかシビアというか、絶妙に独特な目線の持ち主である。前述の翻訳調のテキストがそれに拍車をかけている。

下のセリフは『村』タイルを配置して村が世界に復活した結果、村を襲う盗賊まで復活してしまった(そして倒した)後の一言。お気に入りのセリフなので紹介。

殺しておいて言うことではない

ちなみにこのゲームは初めて遭遇した敵との会話シーンもあります。もちろん前述の盗賊も喋る。ゴブリンも喋る。中にはこんなやつまでいる。

魔法の本の敵

誰がなんと言おうと会話シーンです。なにを言ってるか分からないだけで。

『Loop Hero』はゲーム本体の面白さに加えてフレーバー的な要素も充実しているゲームです、という紹介でした。書き忘れていたがスクリーンショットが微妙に歪んで見えるのはブラウン管テレビ的な画面エフェクトをかける機能がオンになっているからです。画面全体に横線が走ってるのもそのせい。とにかく味があるゲームです。複数の意味で。


ここから下はボスのネタバレ話になります。全部ネタバレなので一応隠しておきます。

ヒント:ラスボスの名前(半角アルファベット5文字)

ボス、というかなんといっても話したくなるのはこいつ。何を食べたらブラックホールの猟犬なんて思いつくんだ。犬がブラックホールになったのではなくブラックホールが犬になったという設定も謎すぎて見逃せない。かわいいね。

ワオーン!

順番が前後したが第1のボス・リッチ。ホネのくせにビジュアルが良いという美味しいキャラ。トレイトの『幸せな忘却』を運良く引けると意外とあっさり倒せるのも(意図的なのだろうが)ある意味美味しい。自分の技でやられるボスって結構王道なのでは。

意味深なことしか言わんホネ

第2のボス・プリーステスさん。話が通じない系きれいなお姉さん。ステンドグラスを盾に戦うスタイルは美しいが自分でトレイトで使うとなるとそんなに役に立たなかった印象があります。再戦時の「やめてくれませんか?」「やだね!勝負だ!」のやりとりが好き。

神の狂信者キャラが言いそうなセリフ全部言うお姉さん

第3のボス・ハンター。なにより目力がやばいが、会話を読むにつれなんとなくカッコイイような気がしてきてしまう不思議なアニキであった。主張に納得は出来なくとも行動に一本の芯が通っている人物はカッコイイ気がしてしまうものだ。

なにげに常時前歯見せなのもやばい雰囲気の醸成に一役買っているアニキ

そしてラスボス・オメガ。自分が生み出したものから存在を否定されて性質が反転した元・創造神、ということでいいのか。槍で突かれても傷ひとつ負うことさえない絶対的な力を持ちながら、それでもあえて殺されてやることを選択したのは彼なりの被造物への愛だったのかもしれない。なんて迷惑なんだ。
主人公にやられても膝をつくことなくわざわざ玉座をもってきて座るあたりも厄介な性格を感じさせて良い。

このポーズだけで「あっこいつ神様だな」と分かるのがなんか面白い

最後にボスではないがあの人の話。ゲーム冒頭で「誰よこの女、どっから湧いてきたのよ!」と全プレイヤーが思ったであろう疑問を唐突に回収していったあの人である。結局この人が一番謎でしたね。

(追記:2024年9月2日)

ストーリーとか世界設定については語られているのが全てなのだろうが、言い回しがいまいち難解で分かりにくいので自分なりに考えた↓ (注意:ラスボス再戦以降のネタバレあり)

  • かつてアルファ=創造神が世界を創造したが、被造物である人間のひとりに自分の存在(=創造そのもの)を否定されたことで存在意義が反転しオメガ=破壊神になった。アルファ=オメガ
  • 世界はマルチバースあるいはパラレルワールド的に複数存在していて、他の世界もオメガが滅ぼしたのでどの世界も滅んでいる。
    • ボスとの再戦時は別の世界にいる同一存在のボスと戦っている
      (根拠:オメガ再戦時に主人公が「自分の世界から去ってこっちへ来たんだ。」と言っている)
    • あるいは別の世界にも主人公的存在がいてプレイヤーはそっちを操作しているのかも。「いったい何人のお前が、他の事象に介入しているのだ?」(by再戦オメガ)
    • 3人のボスがオメガの配下になった理由はオメガ再々戦時に教えてもらえる
      • リッチ=オミクロン:誰より早く世界の危機に気付いたが、抗うのが不可能と分かったのでオメガがオメガ自身をも滅ぼしたあとにオミクロンが新たな創造主となって世界を救う道を選んだ。世界を虚無にするのに便利な技を持っていたのでオメガにも重宝がられている
      • プリーステス=シグマ:信仰心が強すぎて信仰という概念そのものになってしまった人。概念そのものなので滅ぼせない。信仰の概念がある限りどこにでもシグマが現れる。こわい。
      • ハンター=タウ:元は故郷である惑星の守護者だったがオメガには敵わないと判断し寝返る。オメガへの恭順の証として自分の惑星をブラックホールに変えた。ワオーン。
      • ボスの本名がギリシア文字縛りなのはアルファ&オメガに合わせたんだと思います(ο、σ、τ)
  • 謎の女性=女神ヨタは本人の自己紹介を解釈するなら運命の女神、もっと言えばバタフライ・エフェクトの女神といったところか。アルファの被造物ではないとのことだが、世界は広大であるほど複雑性を増し可能性の揺らぎが生じるという必然から自然発生した神性なのかも。
    • ゲーム的に言うと、アルファが空間・時間・物質・温度のタイルを画面に配置すると世界の中に『ヨタ』のタイルも発生する、みたいな感じか。ただし発生するのは画面外
  • ヨタもアルファ同様に世界を愛していたが、彼女が持つ権能はあくまで可能性の操作であるため、その力を振るうには世界に存在する何者かに介入する必要があった。そこでオメガを倒しうる可能性を持つ存在=主人公を選んでオメガを倒すよう仕向けることにした。
    • 世界に僅かに残った場所にプレイヤーの協力者になる人物たちが偶然揃っていたのはヨタがそうなる条件を揃えたからであろう(あるいは滅ぼされない場所が僅かにでも残ったこと自体が)
    • 主人公はアルファに槍を突き立てた人間の子孫であり「一度倒せたんだからそいつと縁があるコイツも同じ事が出来るだろう、いや、出来る。」という基準でヨタに選ばれた。そういう僅かな可能性を信じて増幅するのが彼女の能力と思われる
  • 壮大なことをやっているようだがヨタの目的は「オメガの考えを変えさせる」の一点である。アルファに匹敵する創造の力を持つのはオメガだけで、世界を元に戻せるのは彼だけだからだ。結果的にオメガは世界を作り直す(元に戻すのではなく)と約束したのでヨタの目的は半分くらいは叶ったのではないか。
    • 世界が滅ぼされ虚無になるにつれ世界の可能性は減っていく。可能性を司るヨタにとっては文字通り存在の危機で、彼女にとって主人公のサポートをするのは自分自身を懸けた戦いでもあった。多分。
    • しかし世界が新しくなったとしてまたアルファを倒そうとする人間が現れたらまたアルファはオメガになるかもしれない。歴史は繰り返す(ループ)
  • 別の世界ではその世界のオメガが同じように世界を滅ぼしているが「オメガに勝利する」というひとつの成功例が生まれたことによって別の世界も救える可能性が生まれた。だからラスボスを倒したのに再戦させられるんですね。主人公はやる気みたいだからいいですけどね。

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なお裏ボスとかは全然手を出していないです。図鑑もクリアまでには埋まらなかった。全要素を見るには何時間かかるのだろう。

スタッフロールのセンスが良いゲームは良いゲーム
karayage