タマゴの奥底
- タマゴに戻ってきた。図書館で得たヒントの通りにやってループを脱する。廊下の最奥には底へと開く深い穴があった。
- そこに飛び込むリンク。床にクジラのような絵が描かれた部屋に着地。どこからともなく声が聞こえる。
われらは、あくむのなかより うまれ いでしもの....
ユメという とざされた せかいに ちつじょを きずくがため、
「かぜのさかな」に、えいえんの ねむりを あたえた....
これで、めざめによって しまが きえてしまうことはない。
われわれこそ、カミなのだ!
................
- そう嘯く謎の声はリンクを邪魔者と見なし排除のため襲い掛かってきた。真っ黒な不定形の体に2つの目だけが光る。
- というわけでラスボスのシャドー戦。名前の通り影のようなボスである。一見すると地味とも言える雰囲気のラスボスだがなんと第6形態まである。
- 意味深なことにシャドーはそれぞれの形態で『神々のトライフォース』に登場した敵やボス達の姿に変化するのだった。最初はスライムことゾルの形態。これに魔法の粉をかけて倒すと次はあの司祭アグニムの姿に。『神トラ』で戦ったのと同様に魔法弾を剣ではじき返して反撃すると今度はデグテールの形になる。これも『神トラ』同様に倒す。
- そして第4形態で影はついに大魔王ガノンの姿となり、炎のコウモリを飛ばすといった前作ラストバトルを髣髴とさせる攻撃を仕掛けてくる。初見の時は元ネタを知らなかったので特になんとも思わなかったが今は『神トラ』クリア後なので無駄にテンションが上がります。かつてのリンクの強敵ということで対抗のためこれらの姿を取ったのだろうが倒し方を知っているから怖くもなんともないぜ。
- しかし大魔王の影を退けると急にネタ切れになったのか目の部分だけの状態で体当たりしてくるように。リンクの動きに追尾してくるので普通に避けづらくて困る。調子こいてすみませんでした。
- どうにかダメージを与えていくとようやく最終形態。体から両腕が生えたようなよくわからない姿になり果てたシャドー。もはやなりふり構わずといった感じで太い腕を振り回しリンクに叩きつけてくる。ときどき体の中心に大きな一つ目が開くのでそこを狙って攻撃。剣は効かない感じがしたのでとりあえず弓矢で。
かぜのさかな
- 戦いは終わった。第6形態もあるとやはり緊張感が違う。巻き戻しも使ってますけどね。
きえてしまう...こわれてしまう
われらのしまが われらのせかいが
..わ.れ.ら.の.し.ま...
....わ...れ...ら...
. . . . . . . .
- 跡形もなく消え去るシャドー。そこに声が聞こえてくる。
「......リンクよ よくぞ あくむに うちかった!」「あがってきなさい。」
- どこからともなく階段が出現。声が導く通りに上っていくと周りの風景が一変。真っ暗な背景に星のような光が輝く謎の幻想的な空間。七色の雲が長い長い階段の向こうに漂っている。
- 階段の上にあった足場にたどり着くとフクロウが登場。
「ぼうや...いやリンクどの! よくぞ、あくむにうちかった!」「その、ちえ ちから ゆうきは、まこと、ゆうしゃの あかしぢゃ!」
- しばしの沈黙のあとフクロウは自身の真実を明かした。フクロウは『かぜのさかな』の心のひとつ。『かぜのさかな』が眠る間に夢の世界を守るのが使命だった。
- しかしある時、夢の裂け目から芽生えた悪夢が島を蝕み始めた。そこにやって来たのが目覚めの使者ことリンクだった。フクロウはリンクの勇気を信じて悪夢に立ち向かうよう導いてきたのだ。
「ありがとうリンクどの... これで、わしのやくめは おわった 「かぜのさかな」にかえるとしよう さらばぢゃ! ホッホウ!」
- フクロウは姿を消した。その直後リンクの目の前に揺らめきが生じる。フクロウがいた場所に現れたのは小さな翼が生えた大きなクジラだった。体中に不思議な模様が描かれている。これこそコホリント島の夢の主である『かぜのさかな』だ。
- 『かぜのさかな』はぽつぽつとリンクに語り始める。初めはタマゴの夢を見ていた。やがてタマゴのまわりに島ができ、人や動物が生まれて世界が生まれた。それがリンクが流れ着いたコホリント島の正体だった。やはり島の全ては『かぜのさかな』の夢だったのだ。
だが、ユメは さめるもの
それが、しぜんのさだめなのだ。
わたしが、めざめると、
コホリントじまはきえるだろう
しかし、このしまの おもいでは
げんじつとして、こころにのこる。
そして...キミはいつか
このしまを おもいだすだろう。
この おもいでこそ、ほんとうの
ユメのせかいでは、ないだろうか
- 今回『夢をみる島』を再プレイした理由の9割がこのセリフを聞くためだったと言っても過言ではない。ここまで言うのを我慢してきたがこのセリフが本当に好きなんです。
- これ、『かぜのさかな』が語っているのはあくまでコホリント島の正体についてなんですけど、つまりはゲームの世界、もっと言うとファンタジーやフィクションの世界そのものについての言葉でもあるんですよね。現実には存在しない、そのうえいつか終わってしまうものだけど、思い出だけは本物として心に残る。
- 思い出というのは不思議なもので、それが現実の過ぎ去った出来事でも、ゲームや物語のことでも『この世に(既に)存在しないもの』として考えると実は両者には区別がない。10年前の現実の思い出を思い出すのと、10年前にプレイしたゲームのことを思い出すのは思い出としては等価でしょう。記憶が薄れてたり間違って覚えていたり、言ってしまえば現実の古い記憶だってフィクションとそう変わらない面があったりもするし。
- 時には現実の辛い記憶よりも、作り物の世界の記憶が自分にとって大きな思い出を残して、大事な心の支えになることだってある。フィクションが存在する意義ってそういうことじゃないですか。どの思い出に価値を置くかはその思い出の主自身が決めることで、現実だから、ゲームだからという基準だけで価値が決まるものではないと。
- 本作が出た当時はまだまだ「ゲームなんて所詮子供騙しの遊び」といった価値観が強く残る時代だったと思いますが、そんな時代に架空の世界の思い出を大切に思うことを肯定してくれるような結末を残してくれたのが泣けてきますよ。
目覚め
.... .... ....
ありがとう リンク....
ときはみちた!
ともにめざめよう!!
さあ! かなでるのだ!
めざめのうたを!
- プレイヤーが思い出に咽び泣いているところで『かぜのさかな』が夢の終わりを宣言した。最後の演奏を始めるリンク。村が、子供たちが、砂浜が、タリンが、そして歌うマリンが消えていく。あんなに広かったコホリント島が、聖なるタマゴごと、すべてが消えてしまった。
- いまだ『かぜのさかな』の夢の中にいたリンクの足元から突然大きな水柱があらわれた。まるで絵本に出てくるクジラが噴気孔から水を噴き上げるように、リンクを上へ上へと押し上げていく……
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- 気が付くとリンクは海の上にいた。船が嵐で沈没したあと、運よくイカダ状に残った丸太にしがみついて眠っていたのだ。視界には青い空と青い海が一面に広がっている。
- 目を覚ましたリンクは丸太の上に座る。不意に辺りが暗くなった。見上げてみると太陽を背にして大きなクジラが空を飛んでいた。大空を泳ぐ『かぜのさかな』の姿を、リンクは笑顔で見送るのだった。
- というところでスタッフロール。爽やかすぎるエンディングテーマがまた泣ける。現実的に考えるとかなり絶望的な状況のはずだがなんだこの爽やかさは。晴れやかさは。悲壮感がまったくない。コホリント島での冒険を乗り越えたリンクならきっとどうにかするだろうという安心感すらある。島は消えてしまっても、彼の経験や思い出は本物なのだから。
- 名曲が終わってTHE ENDの表示が出たあとで最後の泣かす要素。リンクが見上げていた空にマリンの顔が浮かび上がり、その姿が一羽のカモメに変わった。一度もリンクを死なせずにクリアすると見られる隠し特典です。今回は巻き戻し機能のおかげでぬるゲーマーの筆者にも見れました。ありがとうNintendo Switch Onlineよ。最後の最後で画面外に飛んでいくのがいいですよね。彼女は自由にどこまでも飛んでいくのだろう。大好きな歌を歌い続けながら。泣く。
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- というわけで『夢をみる島』再プレイ記録でした。語りたいことはさっき長文で語ってしまったのでここの締めで書くことがなくなった。そういう時もあります。強いて書くならラスボス戦の仕掛けなど『神トラ』プレイ済みでないと分からないネタを味わいながらプレイできたのが良かったですねということくらいか。まとめるなら「再プレイして良かった」の一言。いいゲームだ。DX版の要素があまり拾えなかったのはすみません。また今度のお楽しみ。
- 次は『ふしぎの木の実』プレイ記録に続く。